頭が痛くて痛み止めを大量に飲んでいる(薬物乱用)
薬物乱用頭痛(MOH:medication overused headache)とは?
薬物乱用頭痛は、頭痛を抑えるために使っていた薬が、かえって頭痛を慢性化させてしまう状態です。片頭痛や緊張型頭痛のある方が、市販薬や処方薬を頻繁に使用することで発症することが多く、ほぼ毎日のように頭痛が起こるようになります。
主な症状
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月の半分以上(15日以上)に頭痛がある
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薬が効きにくくなる、またはすぐに再発する
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薬を減らすと一時的に頭痛が悪化するので繰り返し薬を飲んでしまう
原因となりやすい薬剤
以下の薬剤を1か月に10〜15日以上、3か月以上連続して使用している場合、薬物乱用頭痛のリスクが高くなります。
薬剤の種類 | 乱用の目安(日数/月) |
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トリプタン系薬剤 | 10日以上 |
NSAIDs(ロキソニンなど) | 15日以上 |
アセトアミノフェン | 15日以上 |
エルゴタミン製剤 | 10日以上 |
カフェイン含有鎮痛薬 | 10日以上 |
※複数の鎮痛薬を併用している場合も注意が必要です。
治療:乱用している薬を減らすことが第一歩
薬物乱用頭痛の治療の基本は、原因となっている薬剤の使用を中止または減量することです。中止後、数週間から数か月で改善が見られます。
しかし、薬を中止すると一時的にでも頭痛が悪化することがあるので、大切なのは根本的に存在していた頭痛(片頭痛や緊張型頭痛など)の適切な治療や予防的な治療薬の導入です。
根本的な頭痛の原因が片頭痛の場合は
抗CGRP抗体製剤の有効と言われています。
近年、新たな治療法として注目されているのが抗CGRP抗体製剤(エレヌマブ[Aimovig]、ガルカネズマブ[Emgality]、フレマネズマブ[Ajovy]など)です。
CGRPとは?
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛に関与する神経伝達物質のひとつで、痛みの伝達や血管拡張を引き起こす物質です。抗CGRP抗体製剤は、この物質やその受容体をブロックすることで、片頭痛を予防する効果があります。
MOHへの有効性
近年の研究では、薬物乱用頭痛を合併した片頭痛患者に対しても、抗CGRP抗体製剤は有効であることが報告されています。
主な知見:
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抗CGRP抗体製剤の使用により、鎮痛薬の使用頻度が自然に減少し、頭痛頻度が有意に改善
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従来の予防薬に比べ、副作用が少なく継続しやすい
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薬の中止が難しい方でも、抗CGRP製剤を併用することで中止が促進される可能性
文献参考:
Diener HC, et al. Preventing medication overuse headache with anti-CGRP monoclonal antibodies. Cephalalgia. 2021;41(4):409–420.
Kristoffersen ES, et al. Management of medication overuse headache: a systematic review. Cephalalgia. 2020;40(5):464–475.
日本頭痛学会『頭痛の診療ガイドライン2021』 医学書院.
当院での対応
当院では、薬物乱用頭痛に対して、
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頭痛ダイアリーによる薬剤使用状況の確認
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適切な治療薬や予防薬の導入(片頭痛や緊張型頭痛などの根本的な治療、予防療法の導入。抗CGRP抗体製剤を含みます)
を行っています。
**「薬を飲んでも効かなくなってきた」「頭痛が毎日起きる」**と感じている方は、早めにご相談ください。